不眠症とは?

アイマスクを付けている女性

「寝付きが悪い」「途中で目覚める」「朝早く目が覚めてしまう」などにより睡眠の質が低下することを不眠症といいます。日中の倦怠感や集中力低下。またうつ症状などの心身の不調、生活の質が低下します。

  • 入眠できず寝付くのに2時間以上かかる“入眠障害”
  • 夜中に目が醒めやすく2回以上目が醒める“中途覚醒”
  • 朝起きたときにぐっすり眠った感じが得られない“熟眠障害”
  • 朝2時間以上早く目が醒めてしまう“早朝覚醒”

上記の不眠の訴えがしばしばみられ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヶ月間の持続が認められると、不眠症と診断されます。一過性のものは不眠症とはいいません。社会生活や学校生活が困難となることが多いため、早期の診断と適切な治療が必要となります。また、うつの約8割に不眠症状の合併を認めます。不眠の改善によってうつ状態への進行を阻止することができる可能性があるため、早期の診断が欠かせません。

原因

不眠症の原因は、以下にご紹介する5つのどれかに分類することができます。それぞれの頭文字から「5つのP」と呼ばれている不眠症の原因を、確認していきましょう。

①生理的要因(Physiological)

日頃の生活習慣や、睡眠時の環境的な要因から、不眠に陥っている場合は、「生理的要因」に該当する不眠症といえます。具体例としては、「夜間勤務がある仕事に就いており、周囲が明るい時間帯に眠る必要がある」、「騒音や暑さ・寒さなどが、就寝環境に適していない」、「枕や布団が、身体に適していないものを使用している」、といったものが挙げられます。

②心理的要因(Psychological)

仕事や人間関係で悩みを抱えており、心が休まらないことから誘発される不眠症です。慢性的な不眠症の場合は、ネガティブな悩みが原因となっていることがほとんどですが、イベントや行事などが楽しみで、気持ちが昂ってしまう、興奮して眠れない、という場合も、心理的要因の不眠に該当します。

③薬理学的要因(Pharmacological)

口にしている食べ物や飲み物、また薬などの影響で不眠症を発症する場合は、薬理学的要因に該当します。広く知られている代表例は、カフェインです。コーヒーや紅茶、エナジードリンクを過剰に摂取する習慣のある方は、カフェインの作用によって不眠が誘発されている場合があります。またカフェイン以外にも、タバコやアルコールといった嗜好品も、睡眠を妨げる成分が含まれています。さらに薬の種類では、ステロイド薬やインターフェロン、パーキンソン病の薬などが、不眠の原因になりやすいとされています。

④身体的要因(Physical)

アトピー性皮膚炎に由来する肌のかゆみ、喘息によるせきや息苦しさ、四十肩の痛みなど、罹患しているなんらかの疾病によって寝付けないほどの不快感がある場合は、身体的要因に伴う不眠に分類されます。夜尿症や、年齢的な原因に伴う頻尿も、身体的要因の一つです。また、睡眠時無呼吸症候群も不眠症の大きな原因となります。

⑤精神医学的要因(Psychiatric)

神経症やうつ病、統合失調症に代表される、精神的な病気が原因となって不眠の症状が現れることもあります。慢性的な不眠症に悩む患者様のうち、1/3から半数程度の方が精神医学的要因に関係しているとも考えられています。

治療法

夜間の不眠が週2回以上という状態が1ヵ月以上継続していると、不眠症と定義され、治療が必要になります。不眠症に対する治療法は、「薬物療法」と「非薬物療法」の2種類に分類されます。

①薬物療法

お薬の処方

不眠症に対する治療薬は、患者それぞれの症状や、他の疾患との兼ね合いから検討していきます。
従来より広く不眠症の治療に用いられてきたのは、「ベンゾジアゼピン系」と「非ベンゾジアゼピン系」に代表される、脳の興奮を抑える作用を持つ治療薬です。
効果が効き始める時間や、持続性によって複数の種類があり、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒など、患者様の不眠症タイプによって処方される傾向にあります。
また体内時計のズレに対しては、メラトニン受容体作動薬が有効です。時差ぼけや昼夜逆転などの症状に対し、脳内のメラトニンというホルモンが作用する部分を刺激することで、不眠症を改善していきます。脳の覚醒を抑えるという点では、オレキシン受容体拮抗薬を用いてスムーズな入眠を促す処方も有効です。いずれの処方薬に関しても、不眠症に対する十分な効果がある一方で、副作用や他の薬との飲み合わせもありますので、睡眠や不眠を専門としている医師の診断を受けることが大切です。

②非薬物療法

運動をしている若い女性

まず睡眠時無呼吸症候群からの2次的な不眠症の場合は非薬物療法が必要です。また、不眠症治療のゴールは、処方薬がなくとも十分な生活環境や生活習慣を維持することです。
そのため、一時的に処方薬の力を借りて不眠の症状を改善していくだけではなく、日々の生活のなかで改善できる点には対処していく必要があります。
具体的には、就寝前のカフェインやアルコール、喫煙を控えること、定期的に運動をすること、バランスのよい食事を1日3回規則正しくとること、などが挙げられます。寝室の環境を整えることも不眠症の改善には有効な手段ですので、医師に相談しながら改善していきましょう。

対処法、普段気を付けること

不眠症の状態が続いていると、日中の仕事や勉強に大きな影響を及ぼすほか、2型糖尿病や高血圧症、脂質異常症といった生活習慣病に罹患するリスクを高める可能性があります。
さらに、免疫力や集中力の低下など、不眠が身体に及ぼす影響が非常に大きいため、早急に医師に相談する必要のある病気です。
特に不眠症治療にあたっては、薬物療法に強い抵抗感や懸念を抱く方も少なくありませんが、医師の処方の下で使用する治療薬は安全性が確保されていますので、問題ありません。まずは医師の診察と治療薬で正しい睡眠のリズムを取り戻しながら、生活習慣や生活環境を見直していくことが大切です。